あなたのギャップにやられています

「冴子」

「ん?」

「好きだよ」


今までとは違う真剣な顔で、しかも吐息がかかりそうな距離でそう言われると、まるで魔法にかかってしまったかのように動けなくなる。


「木崎くん、あの……」

「ん?」

「私、よくわかんないけど、木崎君のこと嫌いじゃない」

「それは、好きってことだから」


勝手に断定する彼がおかしい。

だけど、私の額に「チュッ」とキスを落とした彼のことを、本当に好きなのかもしれないなんていう気持ちになる。

こんなにストレートに思いをぶつけられると、誰だってそう錯覚するんじゃないかなんて、考えてしまう。


彼は私の手を握りしめたままスースー寝息をたて始める。
やっぱり相当疲れているに違いない。


彼の描いてくれた月夜の絵を思い浮かべたあと、私も目を閉じた。


< 55 / 672 >

この作品をシェア

pagetop