あなたのギャップにやられています
「冴子がいてくれないと描けないんだ。冴子が俺に安らぎと自信をくれる」
「木崎君……」
「ずっと冴子が欲しかった」
私の腰を抱きかかえて、もう片方の手は私の顎を捉えて……。
「こんなに人を愛したのは初めてだ。
この人のためならなんでもできると思ったのも」
この人のため……。
私も仕事でそうだったのかもしれない。
木崎君のためなら、どんな努力も惜しまなかった。
彼の作品が認めてもらえるならと、チャンスがあれば走り回った。
納得のいく作品に仕上がるまで、何時間でもデスクの前に座って離れなかった。
だけど、どんな努力も苦ではなかった。
それは、彼の作品が好きだからだと思ってきたけれど……。
彼のデザインへの真っ直ぐな姿勢が、好きだった。
作品に向かって全力投球する彼が。
なかなか芽が出なくても、文句ひとつ言うことなくひたすら努力を重ねていた彼が。