蕾は未だに咲かないⅠ
雨で濡れてきた顔を袖で拭き、木から塀の上へ移動した。裸足のため、冷たさが痛いくらいに伝わってくる。
そして、塀から地面へ飛び降りた。
ビシャ、と水しぶきが舞い上がり、予想以上に塀が高かったために水溜まりへ全身で落下する。
冷たさが、痛みが、生きている証しだった。
「…死ぬわけには、いかないの。…絶対に。」
自分に言い聞かせるように呟くと、それは雨に紛れて儚く消えていった。
けれど、腹は決まった。
必ず生きてやる。