蕾は未だに咲かないⅠ


中庭だったのは本当にラッキーだった。


全身の運動神経を使い、木によじ登る。雨による湿りで手が汚れたりしたが気にしない。

木から見下ろすと、塀という隔ての向こう側が見える。


普通の道路、だ。

住宅地も犬猿するように建っていた。しかし中の人があたしの助けを拒絶するのは目に見える。

“別邸”は大きい。相当な権力者に決まってる。


そこから抜け出した“反逆者”のあたしを歓迎する人間が何処に居よう。


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