蕾は未だに咲かないⅠ


しかし、唯一の武器であるポーカーフェイスは変わらなかった。無言で無表情に、彼を見つめ返す。


彼はそれが癪に障ったらしく、眉間に眉を寄せる。

睨み合って、数十秒。


あたしは地面を蹴り上げ、水しぶきを撒いて走り出した。迷っちゃ、駄目だ。

――迷ったらお終いだ。


「っ――」

「――」


右の住宅地の道に入り、全力で走りながら息を呑む。後ろから、足音が聞こえるからだ。

追いかけて来てる。


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