惚れられても応えられねーんだよ

街を歩いていて、気軽に友達に会いたい


 朝、6時前に起きてそのまま道場へ行き、岬に借りた岬の道着を着て、岬に稽古をつけてもらう。

 既に数人の者が練習を始めているため、私たちは隅でひたすら素振りだ。

 7時、朝食。岬は合同の稽古に参加することなく、私と一緒に食堂で朝食を食べる。

 8時、新堂の秘書として、副長室へ。

 大抵なんらかの書類が積まれており、既に新堂は仕事をはじめていることが多い。

 12時、新堂と共に食堂で昼食。をとっている所に岬が割り込み、なんだかんだで喧嘩勃発。

 13時、仕事開始。書類の仕事がない時は、新堂のパトロールについて行くこともある。

 つまり、他の部下が運転し助手席に新堂がいるパトカーの後部座席に乗り、新堂の世話をするという具合だが、ただのドライブで終わることも多い。

 そして3人笑顔で帰宅するなり、

「待ちくたびれましたよ」

と、待ち構えていた岬にいきなり手を引かれ、そのままエスケープすることも。

「コラッテメッ!! 1人でサボりやがれ!!!」

 の新堂の怒鳴り声が岬に届くはずもなく、2人の逃避行は始まるのであった。



「ケーキでも食べますか?」

 大通りを堂々と手を引いて歩く岬の後姿は、自信に満ち溢れている。

 岬は左手をポケットに突っ込み、大きな右手で私の左手を包むが、この行為にもお互い慣れるほど習慣化されてきていた。

「……新堂さん、怒ってましたけど……」

「ニコチンの取り過ぎですよ。血が収縮しすぎて物の考え方もタイトになってるんですよ」

「……そっか」

 岬のことは、嫌いじゃない。

 私は、その手に安らぎと戸惑いを感じながら、後について行く。

「あっ!! 雪乃さん!」

 聞き覚えのある高い声に、2人は同時に後ろを振り返った。

「まぁた宗司朗さんですか」

 岬は宗司朗と雅を見るなり、溜息混じりに吐き捨てた。

「なに2人揃ってサボりキメてんだよ。制服プレイもいいけど、そういうのは落ち着いた静かな部屋で……」

「あ、姉貴が雪乃さんの物ができたって言ってたよ」

 雅は嬉しそうに話しかけてきてくれる。

 和也の姉には雅が着ていた物ととよく似たワンピースを縫ってもらい、岬に借りたお金でお礼はしてあるが、他に物ってなんだろう。

「じゃ、先行きやすよ」

 岬は雅を無視して、足を踏み出した。

「オイ待て岬!! 姉貴が雪乃さんに渡したい物があるって言ってるの!!」

「んなのいつでもいーだろーよ。こっちは時間が限られてるんだよ。悪いけど宗司朗さんも……」

「ありがとう雅ちゃん。どうしよ、岬さん。今から行く時間、ないかな……」

 私は遠慮気味に岬に相談してみた。

「ったく……」

 岬は私の手を引いたまま、先へ歩き始める。

「街歩いてっと碌なことねーや」

 その後ろから宗司朗が突っ込む。

「おい、和也んちこっち」
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