夜香花
「可愛くないなぁ。ほら」

 ずいっと深成が、キノコたっぷりの粥を器に盛り、差し出す。

「いらん」

「またぁ。これはわらわが採ってきたキノコだから、大丈夫だよ。そんな警戒ばっかりしてちゃ、身体もたないよぅ?」

 ほれほれ、と鼻先に器を突きつける深成に、真砂は迷惑そうに顔を背けた。
 が、ふと器に視線を落とすと、ひょいと手を差し出した。

「ふふっ。美味しそうでしょ~」

 勝ち誇ったように、深成が真砂の手に器を置く。
 真砂はその器に口を付けるように、顔を近づけた。

 深成が、ずいっと身を乗り出す。
 わくわく、という顔だ。

「お前は食ったのか」

「ん?」

 相変わらずわくわく、という顔で覗き込む深成に、真砂は口角を上げた。
 そして、不意に深成の肩を掴む。

「折角お前が作ったものを、こんなに貰うのは悪い。もう残ってないじゃないか」

「えっ! いや、そんなこといいから……て、わ、わ……」

「この家にいるからって、俺を立てることはない。ほら、お前も食え」

 真砂とも思えないことを言いながら、ほとんど深成を抱きかかえるように押さえつける。
 慌てて深成は身を起こそうとした。
 が、がっちりと身体を掴まれ、足をばたばたさせることしかできない。

 口元に、器が迫る。
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