夜香花
「わーっ。ちょ、ちょっと、いいからっ! そ、そんな、あんたに気ぃ遣ってもらわなくてもいいからっ!!」

 必死に器から逃れようとする。
 ただ遠慮しているだけにしては、あまりに必死だ。

 真砂はさらに、にやりと笑った。
 そして、ん~っと口を引き結んだ深成の鼻を摘む。
 深成の目が、焦りに大きく見開かれた。

「いいから、食いな」

 そう言って笑う真砂は、まるで悪鬼のよう。
 我慢できなくなった深成は、とうとう口を開けてしまった。
 そこに、粥が流れ込む。

「……んむむ~~~っ!!」

 深成は涙目になって、真砂を思いきり突き飛ばした。
 器が飛ぶ。

「けほんっけほっ! ……うっうええぇぇん」

 激しく噎(む)せながら、深成が必死で粥を吐き出そうとする。
 が、どうやら大分飲んでしまったらしい。
 ほとんど出ない。

 そんな深成を、真砂はにやにやと面白そうに眺めていた。

 やがて、ひく、と深成の身体が揺れる。
 その瞬間、深成は真っ青になった。

「……ああ……ううっ」

 ぼろぼろと涙を流しながら、深成は己の胸の辺りを押さえる。
 真砂は立てた膝に肘を付いて、深成の様子を観察した。
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