夜香花
---ち、千代っ。真砂とも清五郎とも関係を持ってるくせに、今はまた違う人と……---

 深成は目を剥いて、思わず食い入るように、蠢く二つの影を見た。

---そ、そういや何とかいう子とも……て、昼間さっきの子らが言ってたな。え、もしかして、これっていわゆる女技の練習なの?---

 それならそれで、なかなか千代は真面目な努力家なのでは、とも思える。
 どうしても自分は嫌だが。

「なぁ千代。俺と正式に所帯を持たねぇか」

 荒い息を吐きながら、男が言う。
 千代はちらりと肩越しに男を見、喘ぎつつ答えた。

「やだよ。正式に所帯を持ったら、真砂様に抱いてもらえないじゃないか」

 それに、と千代は、木に爪を立てつつ続ける。

「一人の男しか相手にできないなんて、あたしゃ耐えられないね」

 ふふん、と笑いながら言う千代だったが、深成は茂みの中で、がぁんと仰け反った。
 男は別段気にする風もなく、好き者め、と呟いただけで、行為を続けた。

「……」

 深成は必死で呼吸を整えた。
 あまりの衝撃のため、心の臓がばくばく言っている。
 このままでは、存在に気づかれてしまう。

 どうやら千代は、女技を磨くために、こういうことをしてるんじゃないらしい。
 しかも、一人の男とだけするのでは、飽き足らないと言う。
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