夜香花
 それから半時ほど後、ふと気づくと、屋敷の北のほうが騒がしくなった。

 桜の木の上で、真砂はそちらの方向を眺めてみた。
 そう大きな騒ぎではないようで、屋敷の周りの通行人も、特に気にすることなく歩いている。

---どいつか、見つかったな---

 まだ年端もいかない捨吉たちとはいえ、全員揃って忍び込んだわけではあるまい。
 掴まったとしても、おそらく一人だろう。

---ま、その辺りは、俺が行くまでに事を成し遂げなかったら、千代が情報を持ってくるだろう---

 別段焦ることもなく、真砂はそのまま、木の上で刻を待った。
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