夜香花
「おやおや、これは。どうされた?」
夜更けにいきなり飛び込んできた深成に、中の長老は、驚いたように声をかけた。
真砂のところ以外に行くところはないが、どうしても真砂以外のここの誰かを頼らねばならないとなると、この長老しか思い浮かばなかった。
捨吉も何とかしてくれそうだが、生憎捨吉の家は知らない。
それに、この長老には、どこか人を安心させる空気があった。
深成は長老の家に入ると、へたへたとその場にへたり込んだ。
「何ぞ、ありましたのか? 頭領が、何か?」
「何かも何も……」
へたり込んだまま項垂れている深成を円座に促し、長老は囲炉裏に小さな鉄瓶をかけた。
「千代が来てさ……。わらわが傍にいるっていうのに、あの二人ときたら、わらわの前で、いやらしいことを……」
言っているうちに、何故かぼろぼろと目から涙が溢れる。
長老は黙って、やがてしゅんしゅんと湯気を噴き出した鉄瓶から、小さな器に白湯を淹れた。
それを深成に差し出す。
「……えっく……あっ熱い!!」
泣きながら器に口を付けた深成が、勢い良く顔を離して叫んだ。
「おお、そら熱いでしょう。今沸いたばかりですじゃ」
少し慌てて、長老が傍の竹筒に入った水を差しだす。
深成は水を飲んで舌を冷やし、ようやく一息ついた。
夜更けにいきなり飛び込んできた深成に、中の長老は、驚いたように声をかけた。
真砂のところ以外に行くところはないが、どうしても真砂以外のここの誰かを頼らねばならないとなると、この長老しか思い浮かばなかった。
捨吉も何とかしてくれそうだが、生憎捨吉の家は知らない。
それに、この長老には、どこか人を安心させる空気があった。
深成は長老の家に入ると、へたへたとその場にへたり込んだ。
「何ぞ、ありましたのか? 頭領が、何か?」
「何かも何も……」
へたり込んだまま項垂れている深成を円座に促し、長老は囲炉裏に小さな鉄瓶をかけた。
「千代が来てさ……。わらわが傍にいるっていうのに、あの二人ときたら、わらわの前で、いやらしいことを……」
言っているうちに、何故かぼろぼろと目から涙が溢れる。
長老は黙って、やがてしゅんしゅんと湯気を噴き出した鉄瓶から、小さな器に白湯を淹れた。
それを深成に差し出す。
「……えっく……あっ熱い!!」
泣きながら器に口を付けた深成が、勢い良く顔を離して叫んだ。
「おお、そら熱いでしょう。今沸いたばかりですじゃ」
少し慌てて、長老が傍の竹筒に入った水を差しだす。
深成は水を飲んで舌を冷やし、ようやく一息ついた。