夜香花
「何故皆、他の者などとつるみたがるのだ。人など信用したところで、何も良いことはないではないか」

 独りごちながら、小屋の中で胡座をかく。
 途端にムッとする血の臭いに眉を顰め、舌打ちした。
 先程ここで、女を盾にしたことを、ようやく思い出す。

「ま、役には立ったな」

 部屋の隅にあった、女の衣服を検める。
 懐の辺りから、ぽろりと小さな袋が落ちた。

「……ふん。ただの好き者かい」

 袋の中の銭を確かめ、真砂はそれを、着物共々部屋の隅に放り投げた。
 身体にも、それらしい印はなかった。
 多分、改めて検分した清五郎も、特に怪しいものは見つけられないだろう。
 身につけていたものも、銭だけとなれば、本当にただの迷い者だ。

「災難だったな。だが、俺の家に入った時点で、死は確定していたことだしな。今夜か明日かの違いだけだ」

 誰も信用しない真砂は、おいそれと部外者に住処を知られるようなことはしない。
 清五郎ら、同じ乱破一党は、昔からこの地にあるため仕方ないとして、里の外からの者など、一旦この地に入ったら最期、基本的には死しかない。
 下手に外部に里の存在が漏れても困るからだ。

 特に真砂は、その点容赦がない。
 この男に、情はないのだ。
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