鬼上司のとろ甘な溺愛



ぽかぽか天気の良い平日。


詳しくいえば金曜日。


花金(花の金曜日)と言われる今日。土日休みの会社員はこのあと予定を入れたり、そうでなくてもどこかオフィスにホッとしたような雰囲気が漂う。

定時には帰りたいと誰もが思う終業時間一時間前。


その怒鳴り声は響いた。

「馬鹿やろう! 先方を待たせるなんてどういうことだ!」


パソコンと電話が鳴り響くオフィスにその声は響き渡り、騒がしいオフィスが一瞬、シンっとなる。


あぁ、まただ。


私はパソコンを打つ手を止めて、チラリと目線を声の主に向けた。
その視線の先にある声の主は怒ったような呆れたような表情で眉を寄せながら自分のデスクの受話器を握り締めている。
それを見て、いつものことかと他の社員はすぐに自分の仕事に取りかかっていた。


「課長、また怒ってますね~」


隣に座る、入社2年目の梅木恵那が怒鳴り声の主である課長をチラチラと見ながら、巻いた髪の毛をくるくると指先で遊びながらいつものように甘えた声で話しかけてきた。

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