ひまわりに

episode14『陽輝のいま』



「あの2人、なんかエエ感じやない?」

2人から少し離れて、
様子を伺っていた。
一番はじめに口を開いたのは、
やっぱりコイツだった。
確かに、ぎこちなさはあるものの
雰囲気は完全にカップル。

「そうだな。」

翔は、安心したような表情を浮かべる。
ったく、2人とも何言ってんだよ。
今更だっつの。

「もともと、気ィ合うんだろ。」

そもそもあいつら、
付き合ってるワケだし。

「せやけど、今までと比べて見ぃ。
あんな涼、初めて見たわぁー!」

奈々のやつ、
嬉しそうなカオしやがって。
涼のことで、そんな嬉しそうなお前
初めて見たっつーの。

......と、安心してるオレに腹が立つ。

なんでコイツごときを
オレは心配したんだろうか......。
今更気づいた、
コイツが落ち込もうが凹もうが
悩もうがキレようが
......オレには関係ないじゃねーか。

「なあハル、
まだライには言うてへんの?」

「は?何のこと。」

「来週の、野外合宿のこと...。」

ー野外合宿
来週の土曜と日曜、涼の兄貴の誘いで
二泊三日のキャンプに行く。
なんでも、
その兄貴の知り合いの親父(要するに赤の他人だ)が
ガキ相手に行事を開いているとかで
オレらはその手伝いっつーわけだ。
一応、涼も来ることになっているが
万が一来れなくなってしまったときに
雷樹が落ち込まないようにと、
ギリギリまで言わない事にしている。

「は、言うわけねーだろ。」

「いつ言うねん、あと6日やで。」

「んなこたぁ、わかってるよ。」

もし涼が
直前で行けなくなったときのことを
考えると、その時の空気を
かんがえただけで怖くなって。
なかなか言えない。

「今日あたり、
言ったらええんとちゃう?」

「...ああ、」

「ったく、急かすなよ。奈々。
雷樹を傷つけたくないって気持ちは
みんな一緒なんだぞー。」

遠くを眺めながら翔が言う

「べつに、オレはそんなんじゃ......。」

「言われんでも、わかるわ。」

奈々は、オレの言葉を遮って言った。

「アンタら、昔のままやもん。
雷樹の事になると、急に怖気ずいて
慎重になるもんな。」

文句有り気に、眉をひそめて言う。

「....何?嫉妬?」

「アホ。そんなんちゃうわ。」

「じゃあなんだよ?」

喧嘩売るような口調のオレに
翔がなだめるような視線を
送ってることに
腹が立つ。

「お前らが
そーやっていつまでも過保護やから
ライがいつまでも
弱虫なんとちゃうん?」

オレは「今更」と思う。
小さい頃からアイツには
涼がついていて、
いつでも涼に守ってもらってたやつだ。
その涼がいなくなった今、
涼の代わりにって
翔が雷樹を守ろうって気になるのは
仕方ねえことだと思うし。
オレも翔の気持ちを
無視するわけにはいかねえし...。

そんな有耶無耶な気持ちは、
とっくに気づいてた。
でも向き合うのが面倒で、
ずっと放置してたらこのザマ。
誰に何をどうしてやればいいのか、
全く分からなくなっていた。

翔自身も、雷樹にどうする事が
「守る」事なのかが
解らないと言った様子だった。

何も言えずにいる翔を見兼ねたのか
奈々は口を開いた

「今までアタシら、
面倒見過ぎたんかな?」

冗談めかして、参ったなー。
なんて言って頬をかく奈々は
ちょっと気まずそうで。
オレもどうしていいか、
わからなかった。
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