ひまわりに
片想いとすれ違い

Episode5『雷樹の片想い』


「おはよぉ・・・。」

私は
いつもより遅く学校にきてしまった。
昨日のバニラアイスのせいで
時間をくい、
課題が朝までかかってしまったのだ。

「うっわ!アンタ顔ひどいで!?」

「パンダみてぇ。」

さっそく奈々と陽輝にからかわれる。
そして、いつもの顔ぶれが・・・
足りないことに気づく。

「翔は?」

「まだきてへんよ?」

「てっきり一緒に来たもんだと・・・」

「そんなわけないじゃん!
あ、昨日ね!?かけるに・・・。」

昨日の出来事、恋愛対象じゃない
って言われたことをを話そうと
口を開くと・・・

「あ、きたんちゃうん?」

「おせーよ!
どんだけ待ったと思って・・・!」

そういえば、この2人って
朝はいつも不機嫌なのに
今日はテンション高いなぁ・・・

「あふぁよ。」

翔の声・・・と?

「翔くん、
待ち合わせに10分も遅刻して・・・
昨日寄り道でもしたの?」

りょ・・・りょう・・・?

私の中で、何かが騒ぎ出す。
コビトが、
忙しく
走り回って
私を焦らせる。
心が、
高ぶっていく。

「雷樹ちゃんも・・・寝不足?」

我に返ると、涼が目の前にいて。
不思議そうに私を覗き込む。
昨日は、弱々しそうに
病室のベットの上にいた涼が
目の前にいる・・・?

「?」

「あっ・・・ちょっと、ね。」

とっさに目の下を手でかくした。

「大丈夫?」

私が1人で焦ってるのを見て、
涼はいつもの笑顔で笑う。

「って、てゆうか歩けたの??
リハビリは??」

「あぁ・・アレは、
今日びっくりさせようと思って
ウソついた。ごめん・・・ね?」

涼だ・・・!
ちょっと気弱で、
優しくて、
子供っぽい。涼!

すると、
3人の会話が遠くから
やっと耳に入った。

「なんやのぉ?
昨日もあったのに、
2人の世界に
はいらんといてくれる?」

「何?
奈々、ヤキモチ?
それとも彼氏募集中??」

「陽輝ぃ!うるさい!
お前はモテるからそうゆうこと
言えんのや!
大体、募集なんてしてへん!」

「大丈夫だ!奈々、
翔みたいにぶりっ子に
ベタベタされる方がよっぽど・・・」

「てんめぇ、そこ言うな!」

いつもの風景、

「いつも、あんな楽しいの?」

「え・・・?」

涼が、さみしそうに3人を眺めていた。
体は戻っても、
記憶はやはりナイらしぃ。
そんな涼をみて、
私の心臓はえぐられるように
痛んだ。
だって・・・

急に目の前が暗くなる。
気分が沈んで、喉の奥がキリキリと傷む

ー何も言ってあげられない。

そう悟った。
涼は、私のことを好きだという気持ちも今では持っていない。
私の想いは片想いに等しく、
涼からしたら鬱陶しいもの。

「らいじゅ・・・ちゃん?」

気づけば、涼は私たちのことを
『君ら』とかって呼んでいた。
今まではもっと乱暴だったり、
呼び捨てだった。
それも、
涼なりの愛情表現だったはずなのに。

ーこれは、涼じゃない?

そんな気持ちが私にのしかかり、
体が重い・・・

「どうしたの?具合わるい?」

「・・・寝不足がひびいてるみたい。」

本当は、そんなんじゃなくて・・・
でも、言えるわけがナイ。
私は明るく振舞うのが精一杯で・・・。

ポンポン・・・
頭に大きな手の感触があった。
翔・・・?

「雷樹のことは、
保健室においてくっから。」

いつもだったら、
奈々と陽輝が冷やかすんだろうけど。
今日はきこえない。

翔に「いくぞ」と言われたから、
身をゆだねた

朝だったから、
保健室に先生がいなかった。
ベットに寝たら?
言われて首を横にふると、
無茶すんなよ。と無理やり持ち上げられベットに寝かされた。
翔はカーテンをひいて、
カーテンの向こうで話し始めた。

「もう、涼に期待すんなよ。」

「・・・・・・!」

こらえていたものが、
限界に達したのか。
一粒、また一粒・・・と溢れ出す。
声を出したら、
きっと震えてしまうだろう。

「俺だって言いたくねぇし。
わかってるだろうけど。
涼だって好きで俺らのこと。
忘れたんじゃない。
てめぇのことだって、
嫌いじゃないだろうし・・・。
でも、彼女として見ていない・・・
いや、見れていない・・・
てのも事実。だから昔の涼を、
今の涼にもとめんな。な?」

「う・・・ん・・・。」

翔の言い方は、涼を諦めろ。
と言ってるふうに聞こえた。
だから、翔の優しすぎる
遠まわしな言い方が涙腺を刺激した。

翔は、
保健室をあとにしようとしたのか。
足音が遠ざかってく。

「あ・・・。」

「?」

「さっき、教室でお前が
暗くなってたとき・・・」

一瞬、何を言われるかどきりとした。
けど

「・・・あれ、
・・・俺がアイスで引き止めたせい? 悪いな。
今度からは、真っ直ぐ帰ろうな。」

「えっ!?」

呼び止めるつもりで声を出したが、
扉の締まる・・・厳しい音がした。

「なんなの・・・。」

翔が言おうとしたこと・・・
わかってしまうから辛い。

ー寝不足のせいじゃないこと、
てめぇが好きな涼なら、
気づいてたな。

期待してないなんて、言えない。
ただ、少し・・・涼に
気にかけてほしかった。
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