【完】結婚からはじまる恋《1》
『ありがとう』


あの時のまっすぐに俺を見つめてお礼を言った少女。


「お前…あの頃のままだな」



「えっ?」



「成長してない…」



俺は一人で笑い、ワイングラスにワインを注いだ。



「…俺のどこに惚れた?」



「…休日のパークオアシスでの会社の新商品のイベントで小さな子供が謝って風船の紐を離してしまって…ディスプレイに引っ掛かった風船をとってあげようと奮闘していた頼さんを見て…優しさに惚れたと言うか…」



「それは優しさじゃない…大事なイベントだ。成功させる為の労だ」



「でも、あの時の頼さんの目はとても優しかったです。顔だって…オフィスで見る…クールな顔とは違ってました…穏やかで…プライベートな頼さんを見たようで…嬉しかったです」



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