ペテン死のオーケストラ


「駄目!!」

マートルは叫びました。

息が上がっています。

静かな部屋。

マートルはすぐに気づきます。

自分が病院にいる事に。

マートルの顔が見る見る青ざめていきます。

急いでお腹を触ります。

「嘘でしょ?夢だと言って!」

マートルは取り乱し、病院のベッドから下り廊下へと向かいました。

小さな病院で、受付がすぐ近くにあります。

マートルは体の痛みに耐えながら受付に向かいます。

受付の女性はすぐにマートルに気がつきました。

そして、慌てて言います。

「安静にしておいて下さい。体に障ります!」

しかし、マートルは泣きながら叫びました。

「私の赤ちゃんを返して!!」

マートルの叫び声は院内に響きわたります。

泣き叫び、正気を保っていないマートルに受付の女性は怯んでしまいます。

すると、マートルの背後から低くも優しい女性の声がしました。

「赤ちゃんが驚きますよ」

マートルは、ゆっくりと振り向きます。
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