ペテン死のオーケストラ

我慢の日々

白衣を着た優しそうな年配の女性が立っていました。

女性は微笑みながら話します。

「私は貴女の担当医です。貴女、お名前は?」

マートルは唇を噛み締めます。
そして、女性に怒鳴ります。

「何が担当医よ!私の子供を返して!」

「落ち着きなさい。子供を奪ったりなんかしてないわ。ちゃんと、貴女のお腹の中ですよ」

「嘘よ、嘘よ!私のお腹に赤ちゃんが居ないって分かる!」

「私は産婆ですよ。安心なさい。貴女の赤ちゃんは元気に育っているわ」

マートルは言葉に詰まります。
産婆の表情を見て、嘘をついてるとは思えなかったからです。
しかし、あまりにも色々な事があったため素直になれないのです。
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