ペテン死のオーケストラ
サイネリアは軽く深呼吸をしてから答えました。

「違うわ。毒を盛ったのはマルメロ、貴女よ」

見守っていた人々は歓声をあげます。

「やはりマルメロだった」と、口々に言うのです。

しかし、ストケシアが泣きながら訴えるのです。

「止めて下さい、止めて下さい!マルメロ様ではないです。俺がやりました!」

そんなストケシアをサイネリアが咎めます。

「男性が人前で泣くだなんて…。滑稽です。お止めなさい」

ストケシアはサイネリアを見つめ震えています。

すると、マルメロがサイネリアに言いました。

「サイネリア、ストケシアに何か言ってみなさい。私が許さないわよ」

サイネリアはため息をつき、マルメロに言います。

「何も言わないわよ。ただ、混乱している人がいると邪魔だと思っただけよ。マルメロも、思うでしょう?」

「混乱だなんて。ストケシアは、取り乱しているだけよ…。そんな事より、サイネリア早く白状しなさい」

「何を慌てているの?時間なら、たっぷりあるのに。早く、犯人を決めたいみたいね」

「慌ててなんかいない。話しを進めているだけよ。サイネリアこそ、何かから逃げているみたいに見えるわよ?」

「私が逃げる?何からよ?逃げるのはマルメロでしょう?」

「私は逃げないわ。だから、ここにいる」

「なら、認めなさい。マルメロが毒を盛ったとね」

「それを言うなら、サイネリアが毒を盛った、でしょ?」

マルメロとサイネリアの探り合いは延々と続きます。

ストケシアは泣き崩れているだけ。

人々は悩みはじめました。

マルメロには、証拠も理由もありません。

サイネリアには、証拠はありませんが理由があります。

しかし、その理由も曖昧です。
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