ペテン死のオーケストラ

マルメロにとって幸運だったのは、母親が不在ということでした。
マルメロの母親なら、飛びつくような話し。
ハンノキと会わせたなら、面倒なことになるのが目に見えます。
絶対に母親に会わせては駄目だと、マルメロは考えました。

マルメロは怒りを抑え冷静にハンノキに話します。

「私はハンノキ様と結婚なんて考えていません。私はまだ１４ですよ？ハンノキ様は、おいくつですか？」

「３５だ！マルメロが、１４才とは驚いた。その美しさと魅力は、立派な大人の女性だぞ！それに、ワシは年齢なんか気にしない！」

「私が気にするのです。あまりにも歳の差がありますわ。母親も反対いたします。ハンノキ様、申し訳ございません。結婚はお断り致します」

「何故だ？マルメロを世界一の幸せ者にしてやるぞ！何一つ不自由のない生活だ。もちろん、マルメロの母上もだ！ワシは偉いからな、何でもできる！」

「私にとって、ハンノキ様との結婚が不自由です。どうか、帰ってください」

「絶対に諦めない！こんなに、ワシが燃え上がったのは初めてなのだ。マルメロはワシのものだ！」

マルメロは、眉がつり上がり顔が赤くなるほど怒りがたまっています。

ハンノキの次の一言でマルメロは爆発してしまいます。

「マルメロ、顔が赤いぞ！可愛いやつめ。照れておるのか！」

マルメロの中で何かが弾けました。

「いい加減にして！さっきから勘違いばかり！私は誇り高きマルメロよ！貴方じゃ満足できない！私は、王族に嫁いでも良いくらいの女なのよ！それを何で貴方みたいな男の嫁なんかに！絶対に嫌！帰って！！！」

マルメロは怒りにまかせ、怒鳴りました。
息があがり、頭がクラクラします。
こんなに苛立ったのは初めてでした。

ハンノキは、固まっています。
さすがのハンノキも、マルメロの怒りに驚いた様子。
マルメロは、そんなハンノキをみて「ふん！」と息を吐き捨てました。

マルメロが家の中に戻ろうとした時、驚くことが起きます。

「ガハハハハ！！！！」

ハンノキの下品な笑い声が聞こえたのです。

「最高だ！マルメロよ、やはり最高だぞ！ワシは気の強い女が好きだ！お前みたいな女はワシ以外の男じゃ、つとまらんぞ。良い女だ！ワシの嫁になれ！」

マルメロは力が抜けてしまいました。
何を言っても無駄だと分かったからです。
頭がクラクラ、もう倒れてしまいそうです。

「舞踏会なんか行くんじゃなかった…」

マルメロは、悔いてしまいます。

ハンノキは嬉しそうに言いました。

「どうやら、母上はいらっしゃらないようだ！明日の夜に伺うとしよう」

マルメロは瞬時に「逃げるしかない！」と思いました。

しかし、ハンノキは付け加えます。

「絶対に逃がさんぞ！この町はワシが制覇している！マルメロよ、諦めろ！そして、安心しろ。必ず、幸せにしてやる！」

マルメロは、目眩がして本当に倒れそうになります。

ハンノキは「明日が楽しみだ」と、ご機嫌です。

マルメロは何も言えません。

「では、ワシは帰る！マルメロよ、幸せになろう！」

ハンノキは宣言をして、笑いながら帰っていきました。
マルメロは、動けずに立ちすくみ頭の中まで止まっていました。