ペテン死のオーケストラ
その後のマルメロはもぬけの殻。

部屋に戻り、ベッドに倒れ込みました。

寝ていないのに、全く寝れません。
ただ、時間が過ぎていくだけです。

母親が帰ってきても、マルメロは何の反応もせず夕食も食べません。
母親との毎日のケンカも、ありませんでした。

マルメロは部屋にこもり、ただボーッと時計を見ていました。

「明日…。明日、私はハンノキと婚約するのね」

マルメロは、現実を考えると目頭と鼻が熱くなってくるの感じます。
懐かしいこの感覚。
以前、母親とケンカした時に感じた感覚です。

マルメロは、バッと立ち上がり紙を取り出し書き続けます

「泣くな!泣くな!泣くな!…」

マルメロは、必死に書き続けました。
不思議な事に、書き続けていると落ち着いてくるのです。
マルメロは、少し落ちつきを取り戻し最後の一文を書きました。

「私の野望を叶えるチャンスだと思え!」

マルメロの目に力が戻ります。

「そうよ…!私を認めさせるチャンス。これを踏み台にして上へ行く!!」

マルメロは、感傷に浸っていた自分を笑いました。

「私は駄目ね。すぐに感情的になってしまうわ。母親とのケンカで学んだじゃない。感情的になった方が負けだと。私は特別なのよ、自信と誇りを持つこと。そして、必ず皆に認めさせるわ!何て言われても良い。私は私のために生きる」

マルメロは片方の口角をあげ笑いました。
そして、自分の両頬を軽く叩き気合いをいれます。

「私の野望!皆が羨望の眼差しでみてくる事!そのためなら、何だってする」

マルメロは、更に強くなるのです。
ハンノキを手玉にとり、のし上がるための踏み台にすると決心しました。

決心すると、早く明日がきてほしいと思い始めました。
また、腹の底から笑いが込み上げてきます。

「私はマルメロ。やってやるわ」

マルメロは、小さく呟くとベッドに横になり眠りにつきました。
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