ペテン死のオーケストラ
『親愛なるマルメロへ

マルメロ、初めての手紙よ。ちゃんと、届くかしら?

この間の舞踏会、まさか私が選ばれるだなんて思っていなかったわ。

あの後、アザレアとゆっくり話しをしたの。

彼、私が思っていたより良い人だったわ。

正式にプロポーズされたのよ。

ただ、悩んでいるの。

私は、この町を離れたくないのよ。

マルメロがいるから、貴女の町も良いと思ったわ。

でも、やっぱり恐いの。

マルメロと話しがしたい。
親愛の証としてペンダントを贈るわ。

気に入って頂けると嬉しい。

また、手紙を書くわね。

サイネリア』


便箋と共に、ペンダントが入っていました。

マルメロの頭文字の形をした金のペンダントです。
見るからに高そうなペンダント。

マルメロは、冷たい表情で手紙とペンダントを机の中にしまいました。

マルメロは、自分の感情と戦っています。
正直な感情は、苛立ちと屈辱感で爆発しそうです。
しかし、マルメロはその感情を抑えられるようにならないと成長できないと考えているのです。

「ふぅー…」

マルメロは小さく息を吐き出し、落ち着きを取り戻します。

そして、紙を取り出し書きなぐりました。

「無神経なサイネリア。さすがは貴族!忘れるな、私は特別。特別なのよ」

紙に書きなぐり、完全に落ち着いたマルメロは、サイネリアとは関わらないと決めました。


手紙は捨て、ペンダントは母親にあげました。

母親の名前はマルメロと同じ頭文字だからです。

母親は金のペンダントを見て歓喜の声をあげました。

「初めてよ!?こんな…!あぁ!なんて幸せなの!?」

マルメロは、そんな母親を蔑みました。

「どいつもこいつも、下品だわ」

マルメロはすぐに自室に戻り、一人で静かにすることにしました。

静かな部屋でマルメロは考えます。

「何で、人間は物に弱いのかしら?美しいとは思うけど、ただ美しいだけ。それだけよ。もっと素晴らしいモノがあるはずよ。低俗な人間には分からないだろうけど。ただ、操りやすいのは有り難いけどね」

マルメロは「ふん!」と、言うとベッドに横になりました。

明日は騒々しい一日になるので、早く寝ることにしたのです。
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