ペテン死のオーケストラ
翌日、ハンノキは朝早くにやってきました。

「さぁ!マルメロと母上よ!共に行こう!!」

家の外には、ハンノキの豪華な馬車が二台も止まっています。

母親は騒いで喜んでいます。

一台は、母親用。
もう一台は、ハンノキとマルメロ用だそうです。

「母上、気に入って頂けましたか?これで、好きな所にいけますぞ」

ハンノキは得意げに母親に言いました。
母親は嬉しそうに馬車に乗ろうとすると、更に歓喜の声をあげました。

「馬車の中に、ドレス、宝石が山積みよ!?これは何なの!?」

ハンノキは、また得意げに答えます。

「母上への贈り物です。全て貴女の物です」

母親は興奮して騒いでいます。
そんな母親を見て、マルメロはウンザリします。

「下品」

マルメロは母親もハンノキも下品だと蔑み、自分は冷静に馬車へと乗り込みました。

中は、分厚い絨毯と分厚い壁、その全てに美しく刺繍が施されています。
マルメロも「綺麗」と、正直に思いました。

馬車の中から外を見ると、何だか自分が王女様になったような気分です。

マルメロは「悪くないわね」と、笑いを堪えつつ少し気を良くしました。

ハンノキも乗り込み、二台の馬車は走り出します。

町中を走れば、人々は驚いた顔でマルメロを見てきます。

マルメロは勝ち誇った笑みを浮かべ人々を見下します。

「そうよ、最高に美しいものは権力!私を見なさい!己の力で、ここまできたわ!」

マルメロは、悪口を言われ続けた過去を思い出していました。

権力があれば、悪口すら言われないのです。
言われていても耳に入ってきません。

マルメロは、更に気をよくしました。

しかし隣には、だらし無く笑っているハンノキが座っています。

マルメロは、ハンノキを睨みつけ「こいつだけは、好きになれないわ」と思いました。
「踏み台よ、踏み台!」マルメロは、自分に言い聞かせます。

馬車はドンドン町から離れていきます。
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