ペテン死のオーケストラ
20分くらい走り、やっと馬車は止まりました。

町は全く見えません。
緑が豊かな小さな森の前です。
ハンノキが言いました。

「ここだ!さぁ、行こう」

マルメロは意味が分かりませんが、馬車から下りました。

母親も馬車から下り、小さな森を不思議そうに見ています。

その森は、美しく整備されており、まるで誰かが作ったような可愛らしい森です。
ハンノキは大声で言いました。

「マルメロよ!この森を、お前にあげよう。ワシの気持ちが伝わるだろ!?」

マルメロは驚きました。
森を用意してくるとは思わなかったからです。

母親は、明らかに興味がなさそうです。

ハンノキは続けます。

「この森は、ワシがマルメロをイメージして作らせたのだ。さぁ、見に行こう!」

マルメロは呆れました。
森まで作ってしまうハンノキの財力と発想力に。

母親は、あくびをして「私は足が悪いから、歩くのは遠慮するわ」と、嘘をつき馬車へと戻りました。

マルメロも「くだらない。これじゃ、町の人々に分からないじゃないの!」と、苛立ちました。

しかし、ハンノキは自信満々にマルメロに言います。

「是非、見てくれ!ワシの自信作だ!」

マルメロは「これも試練よ」と、心を決めます。

ハンノキに続き、森へと入っていきました。

小さな森は、まだ作られたばかりなため全てが小さく可愛らしい雰囲気です。

光りも差し込み、森だというのに明るく広々としています。

少し歩くと、ひらけた場所に出ました。

草原のように草花な咲き乱れ、真ん中に小さな泉があります。
その隣に、可愛らしい小さな家が建っています。

ハンノキはマルメロに言いました。

「ここはマルメロだけの場所だ。ワシもマルメロの許しを貰わないと入れない場所だ」

マルメロは、その言葉に心がざわつきました。
ハンノキは、マルメロが思っているほど馬鹿ではないと感じたからです。

そして、何故か悲しくなってしまいました。

ハンノキは、そんな雰囲気を壊すように大笑いします。

マルメロも、少し笑いました。

そして、マルメロはハンノキに言いました。

「本気だと分かりました。ハンノキ様のお嫁様にして下さい」

ハンノキは、マルメロの言葉を聞き「やったぞ!世界一の幸せ者にしてやる」と、大笑いをあげながら叫びました。

マルメロは、ハンノキを見る目が少し変わりました。
しかし、これはマルメロの野望への第一歩に過ぎません。
つまり、ハンノキは踏み台である事に変わりはないのです。

「成功するためには気を許すな!私は、もっと上にいくのよ」

マルメロは、小さな自分の森を眺め決意しました。
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