Red Hill ~黄昏の盗賊と冒険者~

一瞬にして、ブロフィーの視界には阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていった。

だが、恐怖はそこで終わらない。

黒い悪魔たちがやって来た方向のその向こう、そこには津波のように押し寄せる黒い壁が広がり、刻々と迫ってきていたのだった。


「あ…、悪夢だ…」

腰を抜かし、その場にへたり込む。

その時、耳を劈くような破壊音がしたかと思うと、同時に脇にあった柱が自分に向けて倒れかかってきた。

メキメキと軋み音を上げて崩れていく自分の家。

頭上に降ってくる天井と倒れかかってくる柱、その隙間にブロフィーは鋭い角を備えたバッファロークロウの姿を捉えた。


直後に衝撃が我が身を襲う。

痛みなんて感じるものはない。

何が起きたのか、状況に脳の働きがついてこない中、ブロフィーは黒い悪魔によって弾き飛ばされた。

「あなたーーーっ!」

妻が自分を呼ぶ声など耳に届かない。

地面に叩きつけられたブロフィーの意識は混濁していた。

そのブロフィーの上を暴走したモンスターたちが容赦なく踏みつけて駆け巡る。

肺が、胃が、心臓が、押し潰されそうだ。

自分の足や腕の骨が、モンスターによって踏み潰され、一瞬にして砕けていく様を本能と感覚で理解する。

ブロフィーには、最早立ち上がって逃げる術はなかった。

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