キズだらけのぼくらは
綺麗なしずくに私は釘づけになる。
彼の顔を伝っていったしずくは、やがて彼のシャツの袖にしみ込んだ。
なぜなのか、胸の奥が狭くなる。
呼吸の仕方を忘れてしまったみたいに、うまく息ができない。
教室内は少し暗くなってきて、私の黒い影が彼の上にのびていた。
彼の涙が通った道のきらめきは見えなくなるけれど、なくなったことにはならない。
だって、私の耳には彼が大切そうに呼んだウミカって響きが残っているんだから。
苦しくなっている自分がわからなくなって、ただ拳を握りしめる。
なんでだろう、溺れたみたいに苦しいよ……。
その時、机が大きな音をたて、彼が勢いよく起き上った。
あの名前とともに。
「ウミカ!」
切羽詰まった声で大きく発せられたその名は、空気を切り裂くような勢いで駆け抜けていく。
そして、苦しそうに顔を歪めたまま、私に両手を伸ばしたの。