キズだらけのぼくらは
私はどうすればいいんだろう。
いつも涼しげな顔をしている大翔が、こんな顔をするなんて思いもしなかった。
さっきの私みたいに、溺れかけているみたいに見える。
目には見えない恐怖が水となって押し寄せて、沈められていく。
彼はまさに、溺れそうだった。
いったい、なにをそんなに怖がっているの?
いまだ彼は辛そうに眉根を寄せている。
私は戸惑いながらもそっと彼の方に手を伸ばそうとした。
けれど、私の耳にはあの名前が届いたの。
「ウミカ、ごめんな……」
その名前に、私は静止した。
「ウミカ……、ウミ……カ……」
私は目を見開いて、手をひっこめた。
弱々しい声で、何度も何度も、その名を紡ぐの。
薄い唇を震わせて、切なげに。
そして彼は、右目の目頭から、雨みたいに透明なしずくを一粒こぼしたんだ。