キズだらけのぼくらは


心拍数が上がっていくのを感じる。

私は心臓の上に手を当てて、祈るように時計を見つめた。

夕日の光が届かない壁の上の方で、時計が時間を刻んでいる。

そんな影の中で黒い長針は、12という数字の上にぴたりと乗っかった。

寸分の狂いもなく、黒い針の先がてっぺんをさす。

私はその待ちわびた時に見惚れつつも、視線を入口の方へ移動させていく。

すると移動している最中に、戸が音をたてだした。

ほんの瞬きほどの瞬間なのに、私の視界の端にはスライドしていく戸がはっきりと映りこむ。

だから、声も出ないのに大きく口を開けたまま、私は横を向いていく。

私はもう、戸の向こうにいる人物と視線がバチリとあってしまったんだ……。

心の中がぐちゃぐちゃにかき乱される。

なんで、そこにいるの……?

信じたくないのに、見たくないのに、私は横を向いてしまう。

だって、一瞬のことだ……。

止められるわけ、なかった……。


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