キズだらけのぼくらは
彼は私が考えこんでいる間にももう歩きだしていた。
けれど、もう引きとめる理由もない。
私とは対極のテーブルの端へ行くと、決してこちらを見ずにカバンを手にとった。
「もう、俺は帰っていいだろ」
カバンをひょいと肩に背負い、問いかけではない言葉で私たちに断りをいれる。
でも、新太はここへきてやっと目を開けた。
横目で彼を見ている。
「本郷は、誰だと思う? 今回の真犯人」
新太の声が静かな図書室に響き渡っていく。
大きな声ではないけれど、その落ち着いた声は、淀みなく辺りに広がっていくようだった。
私は思わず息を殺す。図書室に緊張感が走っていく。
「そんなの俺が知るかよ。意外と近くにいるヤツだったりしてな」
そう言った彼の背中は笑っていた。
背負われたカバンは彼の背中で何度か小さく跳ねた。