キズだらけのぼくらは
秋穂までもが、足の動きをピタリと止めて、目を大きく見開いた。
「俺らはこんな茶番劇、付き合ってなどいられない。あとは、お前らだけで好きに楽しんだらいい。失礼する」
凛とした声が教室に響き渡る。
その時、音もなくふたりの手がつながれた。
結愛の華奢そうな手を、新太の大きな手が包み込む。
しっかりした一本一本の指が、結愛をちゃんと掴んでいた。
そして、彼は、結愛の道しるべのように堂々と先を歩いていく。
だんだんと、私がいる入口の方へ近づいてくる彼は、迷いのない強い瞳で前だけを見据えていた。
教室にいる生徒たちはみんな、間の抜けたような顔で彼の背中に釘づけになっている。
私も同じ。
間の抜けた顔をして、どうしようもないコイツらと一緒に見物していたんだから。
彼が入口にさしかかれば、彼のオーラに気おされて立ち退くのが精いっぱい。
真横を通り抜けていく彼は、なにも喋らず、怖いくらいに無表情だった。