キズだらけのぼくらは


「泣いても、俺に謝っても、意味はないぞ。そんな暇があったら強くなれ」

音を立てて風が駆けていく。

新太の白いシャツがバッと膨らんだ。

激しく吹き荒れる風に足をとられそうになり、目を開けているのもやっと。

でも、私は新太のうしろ姿から目がはなせなくなった。

冷たそうで、でも、なにか力強い声が私の頭の中で反響する。

「じゃなきゃ、俺みたいになるぞ。一番大事なものを簡単に奪われてな……」

激しい風のうなりに、彼の声が入り混じる。

シャツは激しくあおられ、それでも彼はフェンスに向かってまっすぐに立っていた。

「自分の身は、自分で守れ……。怖がってたら、大事なもの、全部奪われるぞ」

新太の声が、しっかりと響く。

私はその響きに、胸がきつくきつく締めつけられた。

新太は、自分に言い聞かせているようでもあった。

でも、私に対して言われているような気がしてならないの。

どれも、私はできていないから。


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