キズだらけのぼくらは
「なんだ……、お前か」
気だるそうな低い声が聞こえてくる。
その聞き覚えのある声に、私は目をまん丸にして、視線を少し下げてみた。
すると、ベンチの上にひとりの男子が寝そべっていたのだ。
そして、頭だけを起こしてこちらを見ながら、やる気のそうな表情を浮かべている。
「なんで、アンタがそこに……?」
私は驚いてカバンを落としそうになりながら声をあげる。
放課後の教室といい、体育館裏といい、なぜこうも本郷大翔に遭遇してしまうのだろう?
「俺がいちゃいけないか? 公園はお前だけのものだとでも言いたいのか?」
彼はまたも面倒くさそうに私へ言葉をぐさりと突きたて、ゆっくりと身を起こした。
なにも返す言葉はないけれど、コイツに言われるとなんだか腹立たしい。
けれど彼は眠たそうに欠伸なんかして、寝癖がたった髪をのそのそと撫でつけている。
私は仕方なく、彼が座っているベンチの端っこにちょこんと腰かけた。