キズだらけのぼくらは


「なんだ……、お前か」

気だるそうな低い声が聞こえてくる。

その聞き覚えのある声に、私は目をまん丸にして、視線を少し下げてみた。

すると、ベンチの上にひとりの男子が寝そべっていたのだ。

そして、頭だけを起こしてこちらを見ながら、やる気のそうな表情を浮かべている。

「なんで、アンタがそこに……?」

私は驚いてカバンを落としそうになりながら声をあげる。

放課後の教室といい、体育館裏といい、なぜこうも本郷大翔に遭遇してしまうのだろう?

「俺がいちゃいけないか? 公園はお前だけのものだとでも言いたいのか?」

彼はまたも面倒くさそうに私へ言葉をぐさりと突きたて、ゆっくりと身を起こした。

なにも返す言葉はないけれど、コイツに言われるとなんだか腹立たしい。

けれど彼は眠たそうに欠伸なんかして、寝癖がたった髪をのそのそと撫でつけている。

私は仕方なく、彼が座っているベンチの端っこにちょこんと腰かけた。


< 306 / 490 >

この作品をシェア

pagetop