キズだらけのぼくらは
けれど次の瞬間、床の上で靴底がすれる、キュッという高い音が響いた。
彼の影は壁にまで長く、黒く伸び、その動きを止めている。
その予測できない行動に私は困惑し、呆然と彼の方に視線を投げた。
いくら見ていても、1ミリだって揺らめかない影。
彼の足下から別の生物のように生えているその影は、強い光の分だけ黒さを増している。
夏の終わりはまだ日が長く明るいのに、その一部分だけにはまるで、夜中の深い闇が存在しているみたい……。
私はその闇にのみこまれそう……。
でもそんなとき、彼は不意に言葉を発した。
「お前ってさ、可哀想なヤツだよな」
廊下に反響する彼の低い声。
私の頭の中は真っ白になった。
彼の身体は、微動だにしない。決して振り向かない。
でも今、可哀想って言ったのは彼……?
私は耳を疑った。