キズだらけのぼくらは
新太は右の拳を固めたまま、戸惑って動けないでいる。
結愛はそっと新太から体を離すと、新太の右の拳を両手で優しく包み込んだ。
そして、潤んだ大きな瞳で新太を見上げる。
「これじゃ、同じになっちゃうよ。この手は、野球ボールを掴んでた大事な手なんだよ。こんなことに使っちゃダメ。委員長ならもう、痛みを負ってる」
その時、委員長は崩れるように座り込み、悔しげに何度も何度も床を叩きだした。
声をあげ、髪をむしるように乱し始めもした。
全員が白い目で委員長を見て、再び囁きだす。
「本当に強いのは、優しい新太だよ。悲しみは消えないかもしれないけど、新太はもう、乗り越えたよ」
涙をこぼす結愛がやわらかく微笑んだ。
空が清々しく煌めきだす。
私の心まで雨がやんだ後みたいに気持ちよく晴れ渡っていく感じがした。
切ないけれど、痛いけれど、心の奥が温かい。
私は立ち上がり、まっすぐに委員長の元へと向かうと、まん前に座り込んだ。