キズだらけのぼくらは
私は不自由な左脚を気にしながら、浴槽の縁に一度腰掛けて、ゆっくりと湯船に入った。
口元がつかるまで深く身を沈めて、遠くを見つめる。
テカテカしているはずの真っ白なタイルもあの鏡も、微かな湯気がぼかしてくれていた。
私は、ネット社会では“オシャレな女子高生ももたん”っていう顔をもっている。
何十件もコメントが来たり、中高生のブログではランキング100位以内に入っているそんな人気者。
だけど、本当の私は違う。正反対。
鏡に映った陰気な人間が現実の私、羽咲桃香。
お湯の中で少し普段と違って見える自分の左脚に視線を落としてみる。
今も残っている数センチにもわたるキズ。
これをキッカケに、私は一軍女子を嫌い始めたんだ。
このキズを負ってから、私はそういう人間になっていったの……。