キズだらけのぼくらは


さすがに廊下には誰もいない。

私は人目を気にする必要もなく、堂々と廊下の真ん中を歩いた。

でも、静かな雨の音に入り混じって、リズムの悪い足音が響く。

普段大勢の生徒の声や足音が響いていれば、私ひとりなんかの音も叫びも聴こえないのに。

こんな時だけ、この廊下は、“私”を感じさせるんだね……。

いつだって、私はひとり。

ここに誰かがいてもいなくても、私はひとりぼっちなんだよ。

ひとり浮いてるんだよ。

みんなとは決して揃うことのない、この足音みたいに。

つい、頑張って前に出していた左脚の動きが止まる。

雨音はまだ、私に寄り添ってくれているような気がしたけど、雨音だけなんてさみしいね……。

少し、胸の奥が苦しくなる。

けれどもう、教室の前にたどり着いていた。


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