キズだらけのぼくらは


そう思いながら、いくつかのクラスの前を通り過ぎた。

誰もいなくてしんとした白い廊下が視界を流れていく。

左側を見れば、目地が黒ずんで湿気っていそうなタイルの床が見えた。

薄暗くて人気のないトイレ。

用のない私は足をどんどん前に動かした。

でも、何故だろう。

いつもの嫌な予感がした。

決まって私は、ひとりきりで、嫌な現場を見てしまうんだ。

トイレの方から聞こえてくるすすり泣くような声。

女子らしき声が苦しげに漏れ出て、廊下にまで響いてくる。

それだけで私の足は床に貼りついて、胸が苦しくなるの。

息苦しいぐらいに。

それでも、女子トイレの中をこっそりのぞきこんでしまう私は、毎回後悔する……。

こんな現場、なんでわざわざ見てしまったんだろうって……。

ほら、そこに転がっているのは、悲惨な現実だけ。


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