キズだらけのぼくらは


いくつもの真っ白な封筒が水にぬれて、黒ずんだ茶色いタイルに貼りついている。

濡れたせいで文字は滲んでいて、宛てられた人の名前は、もう黒いしみと化していた。

そんなびしょ濡れの封筒にのびる真っ白な手。

その手は私のところから見ても明らかに震えている。

けれど、トイレの汚らしいタイルから大切そうに封筒をはがしては、膝の上に広げて重ねていくんだ。

封筒の端からは、涙のようにしずくが滴り落ちているのに、気にする様子もない。

なんだか、壊れた機械が無感情に仕事を進めているみたい……。

私がもう少しだけ身を乗り出して中を見ると、そこには耳の下で髪をひとつに束ねた女子が床にべたりと座っていた。

でもやがて封筒を拾い集める手は止まり、子供みたいにしゃくりあげ始めたんだ。

大きな瞳から光るものがボロボロ落ちて、タイルの上の汚い水に混じっていく。

彼女は左手首につけているリストバンドで一生懸命にそれを拭っていたけれど、それでも光るものは落ち続けていた。


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