キズだらけのぼくらは


あの泣き声も、教室から聞こえたあんな話し声も、掻き消すみたいに私は走った。

左足を引きずりながら、できうる限り走った。

もう嫌なんだ、あんな光景を見るのも、あんなくだらない話を聞くのも。

こんな現実消えればいいのに。

けれど次の瞬間、私は正面からなにかに激突した。

その衝撃で身体は跳ね飛ばされる。

怖さから目をつむれば、もう平衡感覚もなく、このまま後ろに倒れていっていそうな気がした。

なのに、私の体はピタリと止まったんだ。

何者かに腕を思いきり引っ張られ、時が止まったみたいに体はこれ以上倒れない。

なんで……?

恐る恐る目を開けた私は、目の前の人物に唖然とした。

鎖骨が浮き出ている開かれた胸元、私の腕をがっしりと捕まえる大きな手、きつく引きよせられた腰。

何故、よりによってコイツなんだろう……。


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