キズだらけのぼくらは
私は、ブラウスの胸元をギュッとつかむようにして胸をおさえた。
苦しくなって目を逸らすけど、彼女の悲痛な声が耳に流れ込んでくる。
悔しくて、ブラウスをつかむ手に力が増す。
彼女はたぶん、この間、秋穂たちにいじめの標的にされていた子。
なんでも一番ではないと気が済まない秋穂が、あんなにラブレターをもらっている彼女を妬んでやったんだ、きっと。
まあ、私にはどうでもいいし、関係ないこと。
だけど、こんなの不条理だよね。
男子にモテているのが気に入らないっていうただそれだけで、ここまでのことされるんだから。
彼女の恋愛事情が派手なものだろうと、妬むのはお門違い。
私は、そういう妬みって、吐き気がするくらい嫌いなんだ。
でも、私は無力。
そもそも彼女を助ける理由もないけど、彼女を救うことも不可能……。
だから、そんな泣き声を私に聞かせないでよ。
こんな場所、一刻も早く立ち去りたくて私は一心不乱に走り出した。