優しい爪先立ちのしかた
ゆっくりと、田舎道を歩く。
「梢って、歳いくつなの?」
「23です。栄生さんの5歳年上です」
「将来の夢って、なんだった?」
振り返る過去。
まとめるには、まだ時間が沢山の時間が必要で。
答えを待つ栄生は、微笑みながら小首を傾げていた。
「善い人」
善い人。栄生は頭の中で復唱する。
誰にとっても難しい夢。
「まあ、到底叶いませんでしたけどね」
苦笑いしながら言った。
「栄生さんは進路、決まりましたか」
「大学行って、好きなことして、のんびり暮らすことって先生には言っといた」
「…今とあまり変わりませんね」
そう? と栄生は唇を尖らせる。繋いだ手が少し緩んで、梢が掴む。
「可能性は無限なんて言えないですけど、選択肢が広いうちに色んなものを見といた方が良いですよ」