優しい爪先立ちのしかた
一言も発さない栄生に、梢が空を見上げた。カナンを送る時、この道を使ったのを思い出した。
なんとなく、カナンはこの街に帰ってくるような気がする。直感にすぎないが。
「…田舎の女子高生は夜遊びが大好きだ、とかって思ったでしょう」
栄生が梢を見る。
「思ってないですよ」
「嘘」
少々図星だ。梢は罰が悪いような顔をする。その素直さが可笑しくて、栄生は笑う。
「どーせ梢から見たら私達なんてガキですよー」
「ガキで結構だったんじゃないんですか」
「うん。出来ることなら、一生ガキで居たい」
ポツリと零れるような栄生の言葉が夜に溶け込む。
一瞬だけ、不安そうな顔が見えた。
栄生は梢の手を掴んだ。「はいはい」と仕方ない感じに梢と手を繋ぐ。