優しい爪先立ちのしかた
痛々しい。
でも、ひっぱたいてくれる友達を持ったカナンを式鯉は幸福だと思う。
「氷室さんに悪いこと言ったかも。私の高校生の時と似てるって」
「え! 似てるんですか!」
「最初はそう思ったんだけどね。違う、私は人の為に平手打ちなんて出来なかった」
カナンにとって式鯉は担任で顧問。そんな昔話を聞けるとは夢にも思わなかった。
そういう、過去を振り返るイメージがない。
今まで後悔はせずに生きてきたような。
「それは、きっとあたしが仲良くなる前の栄生ちゃんと似てます」
くすくすと、笑いながら栄生がここに来て間もない頃を思い出すカナン。それを訊いて、式鯉も笑う。
「愛想笑いとか出来ない子だった?」
「そうそう! それですごく意地っ張りなんですよ」