優しい爪先立ちのしかた

痛々しい。

でも、ひっぱたいてくれる友達を持ったカナンを式鯉は幸福だと思う。

「氷室さんに悪いこと言ったかも。私の高校生の時と似てるって」

「え! 似てるんですか!」

「最初はそう思ったんだけどね。違う、私は人の為に平手打ちなんて出来なかった」

カナンにとって式鯉は担任で顧問。そんな昔話を聞けるとは夢にも思わなかった。

そういう、過去を振り返るイメージがない。

今まで後悔はせずに生きてきたような。

「それは、きっとあたしが仲良くなる前の栄生ちゃんと似てます」

くすくすと、笑いながら栄生がここに来て間もない頃を思い出すカナン。それを訊いて、式鯉も笑う。

「愛想笑いとか出来ない子だった?」

「そうそう! それですごく意地っ張りなんですよ」



< 133 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop