優しい爪先立ちのしかた

チキンカレー、と聞いてから俄然本気で探し始めた栄生が圧力鍋を探し当てた。

「これじゃない? これ!」

キラキラとする瞳に、

「…犬なのはどっちだ…」

「なんか言った?」

梢は黙って首を振る。値段を確認しながら、どれにしようか迷って、最終的に栄生が「これなら沢山作っておける」と示したものに決まった。

「お二人で使われるんですか?」

きっと同棲中の男女にでも見えたのだろう。

店員さんが笑顔で聞いてくるのに、栄生は「そうでーす、チキンカレー作ってくれるんです」と軽く答えた。

彼女にとってそんなことはあまり珍しいことではない。

去年も尾形と一緒に何処かへ行く度に言われたのだ。


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