優しい爪先立ちのしかた

戻った本家では、宴会の準備でバタバタとしている。

普段一部屋の襖を取り払って、四部屋ほど使う。

「すごいですね」

部屋の外でする足音や何かを運ぶ音を聞きながら、梢は呆気にとられていた。確かに、大掛かりだ。

「梢は裏方って庭師しかやってないの? 普通雑用とかも回ってくるものじゃないの?」

「冬は手伝っていたんですけど、本家じゃなくて分家でやってました」

へえ、と納得してから梢に寄りかかる栄生。

既に着替えている二人だが、することもなく栄生の部屋でテレビを眺めていた。

ノックせずに部屋に入って来られたら、この姿を晒すことになる。

栄生の想像出来る範疇でそんなことをするのは滝埜くらいだが。


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