優しい爪先立ちのしかた
だから、と続ける。
栄生は小さく首を振った。
「やっぱり、もうちょっと考えてみることにする」
カナンらしい答えが聞こえた。えへへ、と照れた顔に苦笑して、肩を竦める。
梢に早穂がいたように、栄生にもカナンがいたのだ。
本家から出て、ど田舎のここで暮らし始めた小学生は、最初は都会っ子だと持て囃されたが、愛想が良くなければすぐに省かれる。あの頃、まだ栄生は子供だった。
代わる代わる来る世話役。腫れ物を扱う姿が疎ましくて、嶺にも何度か迷惑をかけた。
そんな中で、カナンだけが何かとくっついてきていた。
きっと先生か誰かに言われたのだろう、と思った栄生はそれを振り払うが、仲良くなるのに時間はかからなった。