優しい爪先立ちのしかた

実に正論過ぎた。

栄生にとって、家業を継ぐのは羨ましく思うところでもあるが、大学を考えていると言っていたカナンがそういう決断をしてしまったのでは、何かから逃げているようにしか見えなかった。

「…ごめん、言い過ぎた。本当にごめん、急に聞いたから」

栄生が申しわけなさそうな顔をしているのを見て、カナンの方が申し訳なく思った。頭を振ってそれを否定する。

「こっちこそ、こめんね」

二人して何に謝っているのか分からない。

「あたし、安易だよね。うん、本当はそうなの。心のどっかで安全な所に止まりたいって思ってた、でも栄生ちゃんはきっとそれで良いのって聞くと思うなあって思って、言えなかった。答える自信が無かったんだよ」



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