優しい爪先立ちのしかた
みたいですって、他人事ね。
式鯉はその言葉を飲み込んだ。
「弟みたいで、先生が夏に仰った"家業"はその子が継ぐと思います。あ、保護者代わりなら家にいますけど」
「それって、血縁者の方?」
「けつえん?」
栄生が一瞬嘲笑するような顔をした。窓の外で小雨の音がする。
雨が降ってきた。
最近、血の話が流行っている? と栄生は式鯉を見据えた。
尊敬する先生への視線ではない。
「血が繋がってれば何ですか? 血が繋がってなければ信用出来ないんですか? 血なんてただの人間を構成している液体でしかないのに?」
姿勢が良い分、迫力がある。
「先生が私の家のことをどう聞いているのか知りませんが、私は自分の意志であそこで保護者代わりと一緒に住んでるんです。
先生がそんなに血を気になさるなら、私の今の血を全部抜いて入れ替えても良いです」