優しい爪先立ちのしかた
ひやり、と首元に風が通った。
「良いお医者様でも紹介してくださいますか、先生?」
「落ち着きなさい」
言われて、栄生は口を噤んだ。
「私が言いたかったのは、血の話ではなくて。縁の方よ」
「…縁?」
勢いの無くなった栄生は首を小さく傾げる。きょとんとした顔は普通の女子高生。
それに少しホッとしたのは心に秘めておこう。
前に広げようとしていた資料を横に避けて、式鯉は机に腕を乗せた。
「あなたの中身を、氷室さんのことをよく知ってくれてる人なの? そこに血とか時間は関係ないの。わかる?」
「…はい」
「今居る方は、そういう方なの?」
純粋な質問に、栄生は考えた。
梢のこと。