優しい爪先立ちのしかた
怒っている栄生を宥めて助手席に乗せる。
「栄生さん」
脚を組んだ栄生は、梢の声を無視するようにそっぽを向いていた。前を向きながらもその格好が分かる。
「分かってますか? この車の運命は俺にかかってるんですよ?」
「……そういう脅迫の仕方はズルい」
「そうでもしないと振り向いてくれないと思って」
「梢が言うと冗談にならないの」
赤信号で止まる。視線を栄生へ向けると、きちんとこちらを見ていた。
何か言いたげな梢の目。
「前の使用人と、」
「尾形と?」
「はい、尾形さんと、寝ましたか」
口を結ぶのは栄生の方。
青信号に変わって、車は動き出す。同時に梢の視線は外れた。